特殊建築物(病院、百貨店、マーケット、ホテル、マンション等の不特定多数の人々が利用するもの)は、いったん、地震、火災などの災害が起こると大惨事を引き起こすおそれがあります。
このような危険を防ぎ、建築物を安全で快適に使い続けるためには、私たちが健康診断を受けるように、建築物についても定期的に点検を受ける必要があります。
そのため、建築基準法では、その所有者や管理の権限を有する方が、定期的に専門の技術者に安全性を調査及び検査させ、その結果を特定行政庁へ報告するように定めています。
これが「定期報告制度」であり、建築物の所有者及び管理者の社会的な責任として、 災害の防止に努め、利用者の安全を図っていただくための制度です。
定期報告制度は、建築物や昇降機などの定期的な調査・検査の結果を報告することを所有者・管理者に義務づけることにより、建築物等の安全性を確保することを目的としています。
建築基準法では、建築物の所有者、管理者又は占有者は、その建築物(遊戯施設などの工作物を含む。)の敷地、構造及び建築設備を常時適法な状態に維持するように努めなければならない(第8条第1項)とされています。さらに、特定行政庁が指定する建築物(昇降機などの建築設備や遊戯施設などの工作物も含む。)の所有者、管理者は、定期に専門技術を有する資格者に調査・検査をさせ、その結果を特定行政庁に報告しなければなりません(法第12条第1項及び第3項)。
つまり、適切に維持管理するとともに、定期的な調査・検査の結果を特定行政庁に報告することは、所有者・管理者に課された義務であり、定期報告をすべきであるのにしなかったり、虚偽の報告を行った場合は、罰則(百万円以下の罰金)の対象となります。
エレベーターにおける死亡事故や遊園地のコースターにおける死亡事故、広告板の落下事故など、近年、建築物や昇降機などに関する事故が相次ぎ発生しました。
この中には、建築物や昇降機などの安全性の確保にとって重要な日常の維持保全や定期報告が適切に行われていなかったことが事故の一因と見られるものがありました。
一方で、たとえば、遊戯施設の検査基準(JIS A1701)には、コースターの車輪軸について年一回以上の探傷試験が義務づけられていますが、建築基準法令上の位置づけがあいまいであるとの指摘がありました。
このようなことから、今般、定期報告制度の見直しが図られました。
定期調査・検査の項目、方法、是正の必要の要否の判断基準が、下記の対象ごとにそれぞれ定められました。
ア.特殊建築物等(劇場、映画館、病院、ホテル、共同住宅、百貨店、飲食店等で一定規模以上のもの
イ.昇降機(エレベーター、エスカレーター及び小荷物専用昇降機)
ウ.遊戯施設(コースター、観覧車、メリーゴーラウンド、ウォーターシュート、ウォータースライド等
エ.建築設備等(換気設備、排煙設備、非常用の照明装置、給水設備及び排水設備)
修理や部品の交換等により是正することが必要な状態であり、所有者等に対して是正を促すものであり、報告を受けた特定行政庁は、所有者等が速やかに是正する意志がない等の場合に必要に応じて是正状況の報告聴取や是正命令を行うこととなります。
要重点点検は、昇降機及び遊戯施設の一部の検査項目にあります。次回の調査・検査までに「 要是正 」に至るおそれが高い状態であり、所有者等に対して日常の保守点検において重点的に点検するとともに、要是正の状態に至った場合は速やかに対応することを促すものです。
要重点点検及び要是正に該当しないものです。
※なお、要是正及び要重点点検に該当しない場合にあっても特記事項として調査者又は検査者が注意を促すこともあります。
調査昇降機と遊戯施設で同じ様式の報告書を用いることとなっていたものが分けられ、調査・検査結果表の添付が義務づけられるとともに、その中で検査項目ごとの担当調査・検査資格者や調査・検査を代表する立場の資格者を明確にすることとし、調査・検査の結果、「 要是正 」や「 要重点点検 」と判定された項目に対する改善策の具体的内容等、前回の調査・検査以降に発生した不具合について報告することとされました。(閲覧対象となる概要書も同様)
定期報告をすべきであるのにしなかったり、虚偽の報告を行った場合は、罰則の対象(百万円以下の罰金)となります(建築基準法第101条第1項第2号)。
定期報告の受け付け事務は(財)福岡県建築住宅センターに委託しています。下記受付窓口にご提出ください。
※報告書提出時の注意とお願いをご一読ください。
受付窓口(財)福岡県建築住宅センター
平日9時00分から16時00分 <昼休み12時00分から13時00分>
なお、上記は受付窓口ですので制度に関することは特定行政庁(北九州市、福岡市、大牟田市、久留米市の区域内のもについてはそれぞれの市、それ以外の市町村の区域内のものについては福岡県)にお尋ねください。
福岡市博多区の有床診療所「安部整形外科」で2013年10月、入院患者ら10人が死亡した火災で、福岡県警は17日、安部龍暢院長(47)を業務上過失致死傷容疑で福岡地検に書類送検した。捜査関係者によると、起訴を求める「厳重処分」の意見を付けた。県警は防火扉の大半が作動せず、避難誘導も行われなかったことを重視し、院長が適切な防火管理を怠ったと判断した。
火災は13年10月11日未明に発生。同整形外科(4階建て、19床)の1階から出火し、患者8人と3階に住んでいた院長の両親計10人(当時70~89歳)が煙に巻かれて一酸化炭素中毒で死亡、5人が重軽症を負った。
発表によると院長は同整形外科の責任者として、火災が起きれば患者らに被害が及ぶことを予見できたのに、防火扉の適切な維持管理や患者の避難誘導などを怠り、患者8人を死亡させ、5人に重軽症を負わせた疑い。
院長の両親について、県警は「居住部分が院長の管理下にない」として立件対象から外した。 県警によると、1階処置室に置いていた温熱治療機器のプラグ部分から出火。
自動で閉まる防火扉は紙やストッパーで固定されるなどして大半が作動せず、建物内に煙が一気に充満したとみられる。
消防の査察で指摘を受けたが、紙などを除去していなかった。
公共性の強い建築物や第三者が多数利用する建築物等の場合には、所有者等による維持保全の不備・不具合によって、事故や災害が発生したり、また被害が拡大したりして、第三者に危害を及ぼす恐れがあることから、建築基準法第12条第1項では、所有者(管理者)はその建築物について、定期にその状況を資格者に調査又は検査をさせて、その結果を特定行政庁に報告することを義務づけられています。
平成13年9月の新宿歌舞伎町における雑居ビル火災、平成18年6月の東京都港区の公共賃貸住宅のエレベーターにおける死亡事故、平成19年5月の大阪府吹田市の遊園地のコースターにおける死亡事故等、エレベーターや遊戯施設の事故が相次ぎましたが、いずれも建築基準法第12条に基づく定期検査報告が適切に行われていなかったことが事故につながった可能性が指摘されています。
平成20年4月より適切な調査・検査が行われるよう、定期調査・検査の業務基準、日本工業規格の検査標準の建築基準法上の位置付けを明確にするため、建築基準法施行規則の一部を改正し、大臣が定める項目ごとに大臣の定める方法により調査・検査を行い、大臣の定める基準により是正の必要性等を判断することとされています。
どのような建築物に調査(検査)の報告の義務があるのかは法第12条第1項
の規定により特定行政庁によって変わります。(別紙による)
尚、全国共通で検査済証発行から初回の報告は免除になります。
第8条 建築物の所有者、管理者又は占有者は、その建築物の敷地、構造及び建築設備を常時適法な状態に維持するように努めなければならない。
2 第12条第1項に規定する建築物の所有者又は管理者は、その建築物の敷地、構造及び建築設備を常時適法な状態に維持するため、必要に応じ、その建築物の維持保全に関する準則又は計画を作成し、その他適切な措置を講じなければならない。この場合において、国土交通大臣は、当該準則又は計画の作成に関し必要な指針を定めることができる。
第12条 第6条第1項第1号に掲げる建築物その他政令で定める建築物(国、都道府県及び建築主事を置く市町村の建築物を除く。)で特定行政庁が指定するものの所有者(所有者と管理者が異なる場合においては、管理者。第3項において同じ。)は、当該建築物の敷地、構造及び建築設備について、国土交通省令で定めるところにより、定期に、一級建築士若しくは二級建築士又は国土交通大臣が定める資格を有する者にその状況の調査(当該建築物の敷地及び構造についての損傷、腐食その他の劣化の状況の点検を含み、当該建築物の建築設備についての第3項の検査を除く。)をさせて、その結果を特定行政庁に報告しなければならない。
2 国、都道府県又は建築主事を置く市町村の建築物(第6条第1項第1号に掲げる建築物その他前項の政令で定める建築物に限る。)の管理者である国、都道府県若しくは市町村の機関の長、又はその委任を受けた者(以下この章において「国の機関の長等」という。)は、当該建築物の敷地及び構造について、国土交通省令で定めるところにより、定期に、一級建築士若しくは二級建築士又は同項の資格を有する者に、損傷、腐食その他の劣化の状況の点検をさせなければならない。
3 昇降機及び第6条第1項第1号に掲げる建築物その他第1項の政令で定める建築物の昇降機以外の建築設備(国、都道府県及び建築主事を置く市町村の建築物に設けるものを除く。)で特定行政庁が指定するものの所有者は、当該建築設備について、国土交通省令で定めるところにより、定期に、一級建築士若しくは二級建築士又は国土交通大臣が定める資格を有する者に検査(当該建築設備についての損傷、腐食その他の劣化の状況の点検を含む。)をさせて、その結果を特定行政庁に報告しなければならない。
4 国の機関の長等は、国、都道府県又は建築主事を置く市町村の建築物の昇降機及び国、都道府県又は建築主事を置く市町村の建築物(第6条第1項第1号に掲げる建築物その他第1項の政令で定める建築物に限る。)の昇降機以外の建築設備について、国土交通省令で定めるところにより、定期に、一級建築士若しくは二級建築士又は前項の資格を有する者に、損傷、腐食その他の劣化の状況の点検をさせなければならない。
5~8(略)
用 途 | 規 模 | |
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(1) | 劇場、映画館、演芸場又は観覧場 | 用途に供する部分の床面積の合計が 300平方メートルを超えるもの |
(2) | ホテル又は旅館 | 地階又は3階以上の階にその主たる用途に供する部分を有し、かつ、その用途に供する部分の床面積の合計が 300平方メートルを超えるもの |
(3) | 病院 | 地階又は3階以上の階にその主たる用途に供する部分を有し、かつ、その用途に供する部分の床面積の合計が 300平方メートルを超えるもの |
(4) | 百貨店、マーケットその他の物品販売業を営む店舗 | 地階又は3階以上の階にその主たる用途に供する部分を有し、かつ、その用途に供する部分の床面積の合計が 1,000平方メートルを超えるもの |
(5) | 共同住宅 | 5階以上に住戸を有するもの |
(6) | キャバレー、カフェー、ナイト クラブ、バー、ダンスホール、 遊技場、公衆浴場、待合、料理店 又は飲食店 | 3階以上の階におけるその用途に供する部分の床面積の合計が 100平方メートルを超えるもの |
種 類 | 適 用 条 件 | |
---|---|---|
(1) | 換気設備 | 法第28条第2項ただし書又は同条第3項の規定により設けられた機械換気設備。 |
(2) | 排煙設備 | 法第35条の規定により設けられた排煙設備。 |
(3) | 非常用の照明設備 | 法第35条の規定により設けられた非常用の照明装置。 |